ステロイド外用薬と市販ケアの違い｜併用の注意点と使い方
sachi
手荒れや湿疹が悪化すると、市販のハンドクリームでは追いつかず、赤みやかゆみ、ひび割れがどんどん広がることがあります。そんなときに病院で処方されるのが「ステロイド外用薬」。
一方で、普段のケアとしては市販の保湿剤やハンドクリームを使う人が多く、両者の違いや正しい併用方法が分からず不安になる方は少なくありません。
本記事では、ステロイド外用薬と市販ケアの役割を明確にし、安全に併用するためのポイントをわかりやすくまとめています。症状に合った使い分けを知ることで、手荒れや炎症を最短で改善することができます。
ステロイド外用薬と市販ケアは“役割が全く違う”ことを知る
まず理解したいのは、両者は目的が異なるという点です。
ステロイド外用薬の役割は「炎症を抑えること」
ステロイド外用薬は、皮膚に起きている炎症そのものを鎮める薬です。
・赤み
・腫れ
・かゆみ
・ひび割れによる痛み
・ブツブツ（湿疹）
これらの原因となる炎症反応を強力に抑えるため、症状がつらい時の“治療”に使うアイテムです。
市販ケア（保湿剤・ハンドクリーム）の役割は「肌を守り育てること」
一方、市販のケア用品の目的は、肌の乾燥を防ぎ、バリア機能を整えることです。
・ワセリン
・セラミドクリーム
・シアバター
・グリセリン保湿剤
これはあくまで炎症を起こさないように“予防”するためのケア。
炎症そのものを消す効果はありません。
治療と予防の役割を正しく使い分けることが改善の近道
つまり、
・炎症がある → ステロイドで治療
・炎症が治まってきたら → 保湿剤で肌を育てる
という二段構えが最速で治すポイントです。
ステロイド外用薬の種類と強さ｜どれを使うかで効果が変わる
ステロイドには“強さのランク”があります。
1. 最強（ストロンゲスト）
炎症が強く、赤みがひどい時に処方されることが多いランクです。短期間でパッと改善させるために使われます。
2. とても強い（ベリーストロング）
ひどい手湿疹や繰り返すひび割れなど、日常生活に支障が出ているケースで用いられます。
3. 強い（ストロング）
比較的よく使われる強さで、手荒れ・主婦湿疹などの治療に適しています。
4. 中程度〜弱い（ミディアム〜ウィーク）
顔や首など皮膚の薄い部分、またステロイドを使い慣れていない人の炎症に使用されます。
手は皮膚が厚いため「弱すぎるステロイドでは効きにくい」
手は角層が厚いため、ミディアム以下では効果が出にくいことが多いです。
そのため、病院では“強い〜とても強い”が処方される傾向にあります。
ステロイドと市販ケアの正しい併用方法｜順番・量・タイミングを解説
併用の最大のポイントは「塗る順番とタイミング」です。
1. 炎症がある時はステロイドを“最初に”塗る
ステロイドは炎症のある部分に直接届かせる必要があります。
正しい順番
- ステロイドを患部に薄く伸ばす
- 5〜10分ほど置く
- その上から保湿剤（ワセリン・セラミド）を重ねる
2. 「まず保湿剤」ではステロイドが浸透しにくい
先に保湿剤を塗ると、保湿成分が膜になり、薬が肌に届きづらくなります。
そのため、ステロイド → 保湿剤が大原則です。
3. 1日2回が基本。特に“入浴後”は必ず塗る
入浴後は皮膚が柔らかく、薬が浸透しやすいタイミング。
・朝の外出前
・夜のお風呂上がり
この2回を習慣化するだけで改善が早くなります。
4. ワセリンは“守るため”、セラミドは“育てるため”
炎症が強い時
→ ワセリンで刺激を避ける
炎症が落ち着いてきたら
→ セラミドでバリア機能を回復させる
この切り替えが回復を早めます。
5. 深いひび割れには「ステロイド＋ワセリンの密封ケア」
夜だけ行う集中ケアとして、有効な方法です。
・ステロイドを塗る
・上からワセリンを厚く塗る
・綿手袋をはめて寝る
朝起きた時に、ひびの深さが軽減していることが多いです。
ステロイド外用薬を使う時の注意点
誤った使い方をすると、改善が遅れるだけでなく副作用の原因になることもあります。
1. “自己判断で強さを上げる”のは危険
強いものほど効きやすいですが、それだけ皮膚への負担も大きくなります。
自己判断でランクを上げたり、家族の薬を使うのは避けましょう。
2. 長期間“毎日使い続ける”のはNG
炎症を抑える薬なので、症状が落ち着いたら使用頻度を減らします。
・最初の1週間は毎日
・改善したら1日おき
・さらに良くなったら保湿剤だけに切り替え
というステップダウン方式が基本です。
3. しみる場所（傷が深い部分）には注意
深いひび割れにしみる場合は、ワセリンを先に薄く塗ってからステロイドを乗せると刺激が軽減します。
4. 顔や首に“強いステロイド”を使わない
手と違って皮膚が薄いため、強いランクの使用は副作用リスクが高くなります。
体の部位によって使い分ける必要があります。
市販ケアの注意点｜誤った選び方は悪化の原因に
保湿剤ならどれでも良いわけではありません。
1. 尿素クリームは炎症期にはNG
尿素は角質を柔らかくする働きがあるため、割れた部分に使うと刺激になります。
炎症が治ってから使うのが正しい方法です。
2. 香料・アルコール入りは避ける
良い香りのものは気分が上がりますが、敏感になった手には刺激が強く、炎症を悪化させることがあります。
3. べたつかないタイプは保湿力が弱いことも
仕事中に使いやすい反面、寝る前にはしっかり保湿できるタイプを使うなど、用途別に分けると効果的です。
ステロイド外用薬と市販ケアの併用で“最短改善”を目指す方法
ここからは、実際の1週間ケアプランとしておすすめの流れを紹介します。
【1〜3日目】炎症を鎮める期間
・ステロイドを1日2回
・ワセリンで保護
・水仕事時は手袋を徹底
赤みやかゆみが早く落ち着きます。
【4〜6日目】バリア機能を整える期間
・ステロイドを1日1回へ減らす
・セラミド配合クリームを追加
・乾燥しやすい時間帯の保湿を強化
ひび割れが徐々に閉じてきます。
【7日目〜】保湿中心のケアに移行
・ステロイドは必要時のみ
・保湿剤（セラミド＋ワセリン）を継続
・寝る前の手袋ケアで仕上げ
肌の状態が安定し、再発しにくくなります。
まとめ｜正しく理解すればステロイドは“怖くない”
ステロイド外用薬は、正しく使えば強力で頼もしい治療薬です。一方、市販の保湿剤は肌を守り、荒れにくい状態を作るために欠かせません。重要なのは両者の役割を理解し、炎症期・回復期・予防期で適切に使い分けることです。
手荒れや湿疹で悩んでいる人ほど、治療と保湿のバランスが改善への近道になります。
ひどい時こそ無理せず、効果的なケアを丁寧に続けていきましょう。
